ファンクショナルトレーニングとは?おすすめの種目・メリット・注意点を解説
身体を今よりも動きやすくさせたり、怪我の防止にも役立つ運動として、「ファンクショナルトレーニング」があります。ただ、ファンクショナルトレーニングはあまり馴染みのあるトレーニングではないため、初めて聞く方も多いでしょう。
本記事では、
- ファンクショナルトレーニングとは
- ファンクショナルトレーニングの種目
- ファンクショナルトレーニングが向いている方
について解説します。
具体的なトレーニング方法についても紹介していますので、自宅でのトレーニングに役立ててください。
ファンクショナルトレーニングとは
ファンクショナルトレーニングは、動きやすい身体を手に入れるために有効なトレーニング方法です。
ファンクショナルとは、日本語に訳すと「機能的」という意味があります。従来、ファンクショナルトレーニングはリハビリテーションを行う目的で使用されるトレーニング方法でした。
事故によって怪我をしたり、病気によって後遺症が残ってしまったりすると、身体がうまく動かせなくなってしまうこともあります。そのような方々に、本来の身体機能を戻す目的としてファンクショナルトレーニングが用いられていました。
現在では、通常の運動として誰でも取り組めるトレーニングになっています。トレーニングに取り組む方が理想とする動きができるよう、身体をつくっていくために用いられるトレーニングです。
ファンクショナルトレーニングの5大原則
ファンクショナルトレーニングの5大原則は以下の通りです。
5大原則 |
意味 |
重力(gravity)を利用する |
自重トレーニング |
分離(dissociate)と協同(integrate) |
体幹を固定したまま他の筋肉を動かすトレーニング |
運動連鎖(kinetic chain) |
全身を使ったトレーニング |
3面運動(3 dimension movement pattern) |
前後・左右・水平の3面の動きを考えたトレーニング |
力の吸収(loading)と力の発揮(unloading) |
力の吸収を利用し、さらなる力を発揮するトレーニング |
人間は常に重力を受けて生活しているため、身体の機能向上には重力への耐性が必要という考えから、ファンクショナルトレーニングでは重力を利用した自重トレーニングを活用します。
また、関節や筋肉の動作を理解しながら、体幹を固定して様々な筋肉を刺激する運動もファンクショナルトレーニングの1つです。さらに、人間の動作には筋肉の連動や神経、心肺機能などの連携が必要不可欠です。そのため全身を使った運動も積極的に行います。
加えて、人間の基本動作は前後、左右、水平の3面で起こっているため、3面の動きを活用したトレーニングも行います。
最後に、力の吸収と発揮については、ジャンプのような動きをイメージするとわかりやすいです。より高くジャンプするためには、膝の屈伸を利用して1度深く沈み込むのが有効です。この性質を利用し、力の吸収によってより大きな力を発生させる運動を行います。
ファンクショナルトレーニングのメリット
本章ではファンクショナルトレーニングのメリットを解説します。
ファンクショナルトレーニングは、スムーズに動ける身体をつくる以外に、怪我の防止に役立つ運動でもあります。また基本的には自重を用いたトレーニングになるため負荷もそこまで大きくなく、動作さえ理解できれば初心者でも取り組みやすいことがメリットです。
メリットその1:怪我の防止に役立つ
ファンクショナルトレーニングは、怪我の防止に役立ちます。怪我を引き起こす原因の1つとして、身体のバランスが挙げられます。身体のバランスが悪いと、本来は均等に負荷がかかるはずが、片方に負荷が偏ってしまうため怪我につながりやすいです。
ファンクショナルトレーニングでは身体の現状を分析し、バランスが偏っている箇所の発見と改善ができます。バランスの偏りは動作の癖が原因となるケースもあるため、運動によって正しい動きを身体に染み込ませることでバランスを保ち、怪我の防止につなげます。
メリットその2:初心者でも簡単に取り組める
ファンクショナルトレーニングは、初心者でも簡単に取り組める運動です。ファンクショナルトレーニングは自重で行う種目が多く、低負荷が特徴です。
一般的なウェイトトレーニングでは筋肥大効果はあるものの負荷が大きく、重いものを持ち上げながら正しい姿勢を維持しなければならないため、難易度は高くなります。
一方、ファンクショナルトレーニングは動きやすい身体をつくることが目的であり、自重を利用したストレッチ種目が多いです。初心者でも高い負荷をかけずに取り組めて、また特別な道具も必要ないため、自宅でいつでも取り組めます。
メリットその3:身体の可動性を高められる
ファンクショナルトレーニングをすると、身体の可動性を高められます。可動性の高い身体は、様々な動作を行える身体のことを指し、柔軟性や神経の伝達、そして一定の筋力が必要です。
ファンクショナルトレーニングでは身体全体を使ったトレーニングや、前後・左右・水平の3面の動きをトレーニングに取り入れることが特徴です。
様々な方向に身体を動かすため神経系のトレーニングになり、また日常生活ではあまり使われない筋肉へ刺激を行き渡らせることができます。結果的に様々な動きにも対応できる身体になり、身体機能の向上につながります。
ファンクショナルトレーニングが向いている方
本章ではファンクショナルトレーニングに向いている方を紹介します。
ファンクショナルトレーニングは身体の機能を高める際に適しており、とくに普段運動をしない方にも効果がある運動です。運動習慣がない方にとって、いきなりダンベルなどを用いた運動はハードルが高いです。
しかし、ファンクショナルトレーニングのようなストレッチなどの動作がメインかつ自重を利用するトレーニングであれば、普段運動しない方でも簡単に継続できるでしょう。
デスクワークが多い方
ファンクショナルトレーニングは、デスクワークが多い方にも向いている運動です。デスクワークが多いと身体の筋肉が固くなってしまうため、こりがひどくなったり、姿勢が悪化したりする原因になります。
ファンクショナルトレーニングには身体を伸ばすストレッチ種目があるため、固まった筋肉をほぐすのに最適です。継続してトレーニングをすると、慢性的なこりを防ぐこともできます。
また、休憩時間にも気軽に取り組めるので、気分転換に活用してみるのもおすすめです。
普段あまり運動をしない方
ファンクショナルトレーニングは、普段あまり運動をしない方でも気軽に始められます。普段あまり運動をしない方にとって、長距離のランニングや道具を使ったトレーニングにいきなり取り組むのはハードルが高いです。
始めたての期間はある程度続くかもしれませんが、長期間継続するとなるとなかなか難しいのが現実です。しかし、ファンクショナルトレーニングは道具なしで取り組める種目が多く、また負荷も低いため、高齢者や女性でも気軽に始められて続けやすいメリットがあります。
運動の習慣がない方、運動を始めたいけど高い負荷をかけることは避けたい方には、ファンクショナルトレーニングがおすすめです。
パフォーマンスを向上させたい方
ファンクショナルトレーニングは、パフォーマンスを向上させたい方にも向いています。ファンクショナルトレーニングの5大原則の1つである「力の吸収と力の発揮」では、より大きな力を発揮させるための動作を行います。
前述の通り、力を溜め込んで放出するジャンプのような動きをトレーニングに活かすため、より多くの力を発揮するときに使う筋肉の強化も図れます。
スポーツにおいてパフォーマンスを発揮したい方、また記録が伸び悩んでいる方は、ファンクショナルトレーニングで様々な動きに取り組んでみることをおすすめします。
ファンクショナルトレーニングにおすすめの種目
本章ではファンクショナルトレーニングにおすすめの種目を3つ紹介します。
ほとんど自重で行うことが可能ですが、本章では道具を用いて行う種目も1つ紹介しています。自重では負荷が物足りない方は、ダンベルやケトルを使って負荷を調整してみるのもおすすめです。
また、トレーニングにおいては正しいやり方を理解することも大切です。各種目の詳しいやり方とポイントを解説していますので、参考にしてください。
どの種目も初心者でも簡単に取り組めるものとなっていますので、ぜひチャレンジしてみましょう。
種目その1:身体開き
身体開きのやり方は以下の通りです。
- 膝を伸ばしたままで四つん這いになる
- 両手は肩幅と同じくらいに開く
- 右足を前に出す
- 右手の外側に右足を置く
- 上半身をひねりながら左腕を天井に向かって伸ばす
- 5の状態で約5秒間キープする
- 四つん這いの姿勢に戻る
- 上記の動作を右左交互に繰り返す
ストレッチ種目になりますが、運動に慣れていない方や身体が硬い方は、無理のない範囲で動作しましょう。身体開きに加え、入浴後のストレッチを習慣化させると身体の柔軟性が高まり、より動きやすくなります。
種目その2:ランジ
ランジのやり方は以下の通りです。
- 足を肩幅に開いて立つ
- 手は身体の横もしくは腰に置く
- 大きく前に一歩踏み出し着地する
- 片足を1歩前に出した状態で腰を下げる
- 腰を下げる際は前脚の太ももが地面と平行になるまで下げていく
- 後ろ脚を使って立ち上がり、直立の状態に戻る
- 上記の動作を左右交互で繰り返す
ランジは主に下半身の強化に役立つ種目です。さらに動作中は身体のバランスに注意しながら行う必要があるため、体幹の強化にもなります。注意すべき点は、重心の位置です。
つま先に重心が乗りすぎると膝の怪我につながるため、かかとに体重をかけるイメージで行ってください。また、足を前に出した際に膝が内側に入りすぎるとバランスを崩しやすいため、膝をまっすぐにしたまま前に出すことを心がけましょう。
種目その3:ゴブレットスクワット
ゴブレットスクワットのやり方は以下の通りです。
- ダンベル・ケトルベル胸の前で持つ
- 足は肩幅より少し開いた状態にする
- つま先を外に向け、かかとに重心を置きながら膝を曲げる
- 椅子に座るイメージで、体幹に力を入れつつ腰を落としていく
- 太ももが床と平行になったら約2秒間キープする
- 最初のポジションに戻る
- 上記の動作を繰り返す
動作中は必ずかかとを床につけた状態で行いましょう。つま先立ちになってしまうと重心がずれ、前傾姿勢になってしまうため、転倒のリスクが上がります。
常にかかとに重心を置くことを意識し、足裏全体で立ち上がるようにしてください。また、つま先より前に膝が出てしまう場合も前傾姿勢になるため、気をつけましょう。
お尻を後ろに引くイメージで腰を落としていくと、つま先より前に膝が出ることを防げます。さらに、立ち上がる際は反動を使うことは避けてください。反動を使ってしまうと筋肉に最大の負荷をかけられなくなり、効果が減少します。反動は使わずにゆっくりと動作を行い、筋肉に刺激を行き渡らせましょう。
ファンクショナルトレーニングの注意点
本章ではファンクショナルトレーニングの注意点を解説します。ファンクショナルトレーニングでは、フォームを崩さないことと、強度をいきなり上げないことが重要です。
慣れない間は怪我のリスクが高まりますので、強度よりも正しい動作を意識しましょう。
注意点その1:フォームを崩さない
ファンクショナルトレーニングをする際は、フォームを崩さないよう注意しましょう。フォームが乱れるとバランスの維持が難しくなり、1点に負荷が集中すると怪我のリスクが高まります。
とくに初心者の場合は、セット数を重ねると疲労でフォームが崩れやすくなる傾向にあります。ファンクショナルトレーニングは身体のバランスを整える目的で行う種目でもあるため、疲労によってバランスが崩れてしまうと本来の効果が得られません。
自身の体力と相談しながら、無理のない範囲でのトレーニングを心がけましょう。
注意点その2:いきなり強度を上げない
ファンクショナルトレーニングでは、いきなり強度を上げないよう注意してください。
ファンクショナルトレーニングのようなストレッチ種目では、筋肉や関節に負荷がかかります。筋肥大効果を高める目的で行うのであれば問題はないですが、身体のバランスを整えたり、機能を高めたりすることが目的のため、過度に負荷をかけるのは禁物です。
また、無理にセット数をこなすと身体に必要以上の負荷がかかり、怪我の原因にもなります。初心者でも取り組みやすく、強度も高すぎないため比較的習慣化しやすいトレーニングですが、怪我をしてしまうとトレーニングを中断せざるを得ない状況になります。
一度トレーニングを止めると、再開するまでに時間がかかり、結果的に運動の習慣化も叶わなくなる可能性が高いです。いきなり高強度でのトレーニングは避け、怪我をしない範囲で行うことが継続の鍵です。
ファンクショナルトレーニングに役立つ道具
本章ではファンクショナルトレーニングに役立つ道具を紹介します。ファンクショナルトレーニングは基本的に自重で行えますが、道具を使うことでストレッチの動作を助けたり、簡単に負荷を調節できたりするようになります。
また、自宅で行う場合に身体への無駄な負荷を減らすための道具も紹介していますので、参考にしてください。
道具その1:ケトルベル
ケトルベルは、本記事で紹介したゴブレットスクワットにも使える道具です。
鉄球に大きな持ち手が付いている形状で持ちやすく、片手でも両手でも簡単にトレーニングでき便利です。似た道具にダンベルがありますが、ダンベルの場合は握った位置の両側に重りがあり、重心とグリップが一直線上にある状態のため、直線的な動作に適しています。
しかしケトルベルの場合は、グリップの下に重りが付いている状態です。そのため、振り子のように身体を大きく使う運動に適しており、ファンクショナルトレーニングなどの全身を使ったトレーニングに向いている道具です。
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道具その2:トレーニングマット
トレーニングマットは、自宅でトレーニングをする際は欠かせない道具です。ファンクショナルトレーニングは自重の種目が多く、身体を床に付けながらストレッチする場合もあります。
自宅の床がフローリングの場合は身体を痛める可能性があるため、なにも敷かずにトレーニングすることはおすすめしません。もし床が固く、トレーニングに適していないと感じる場合は、トレーニングマットを床に敷くことで解決できます。
トレーニングマットがクッションの役割を果たしてくれるため、床に触れる部分に負荷がかかることを防ぎ、スムーズに動作が行えるようになります。ファンクショナルトレーニングに限らず、柔軟性を高めるために自主的にストレッチをする際にも役立ちますので、トレーニングマットが1枚あると便利です。
道具その3:バンド
バンドは、ストレッチをしたいときや、負荷をかけたいときに便利です。バンドを手首にかけて伸ばしたり、足の裏にかけて引っ張って伸ばしたり、使い方は様々です。
ファンクショナルトレーニングでも身体を大きく伸ばす動作が多いため、バンドを用いることでストレッチを助け簡単に負荷の調整ができるようになります。バンドの長さや太さによって負荷が変わるため、自身が理想とするバンドを探してみてください。
»バンド商品一覧
ファンクショナルトレーニングで動けるカラダを手に入れよう
ファンクショナルトレーニングは自重で簡単に始められるため、普段運動しない方にもおすすめできるトレーニングです。また普段スポーツをしている方でも、怪我のリスク低減やパフォーマンス向上に役立つため、幅広い層が取り組めるトレーニングといえます。
低負荷でトレーニングできるため、自宅でも簡単に取り組めて継続しやすい種目なので、運動を習慣化させたい方はぜひ取り組んでみましょう。
ウチノジムでは、ファンクショナルトレーニングに役立つ道具を数多く揃えています。道具があるだけで負荷を簡単に調節できたり、ストレッチの動作を助けてもらえたりするため、トレーニングの効率が上がります。
ファンクショナルトレーニングだけでなく、軽いストレッチにも便利なので、自宅用にトレーニングの道具を探している方は参考にしてください。
»ウチノジム